学校で特異な存在になりつつあった私に対し母は人生修行をさせようと小学校3年時には外交交渉の裏側で根回し役をされていた日米協会会長元衆議院議員の笠井重治先生の下に書生見習いとして預けられました。笠井先生は若くして渡米、シカゴ大学に学ばれ弁論大会で「太平洋の優越」と題して講演、雄弁最優秀弁論賞を授与された程の語学が秀一な方でありました。また福田赳夫首相を始め、歴代総理や米国大統領、駐日大使の他、多数の政財界人と交流がありました。当時の笠井邸には応接間が3部屋あり連日、来客で、ごったがえしお手伝いさんが茶菓を、お盆に乗せて行き来され邸内は高貴な紅茶の香りに包まれておりました。私の、お役目は門から玄関までの、敷石に水を撒くことと広大な庭園の草刈りでした。夜、お客様が、お帰りになり静寂さを取り戻した邸内北側の火の気のない厨房の片隅で丸椅子に座って先生の横で、ささやかな夜ごはんを頂きました。外面上の華やかとは裏腹、つつましい現実を目の当たりに致しました。
さたけ彰信 -先人に学ぶ-
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